少し前、私が伴奏をしているコーラスの中で、
気持ちのすれ違いがありました。
ある団員さんが誰かの言葉に深く傷つき、
「もうコーラスを辞めたい」
と言い出したのです。
みんなの心が疲れてしまった
私たちのコーラスは、決して人数の多い団ではありません。
一人が抜けるということは、単に人数が一人減るだけではなく、
これまでのような活動が難しくなる可能性があります。
直近には、小学校や中学校へ歌いに行く予定もありました。
「このまま公演はできるのだろうか」
「代わりに歌ってくれる人を探さなければならないのか」
「これからの活動はどうなるんだろう」
団長さんをはじめ、周りの人たちも対応に追われました。
そして、今回のことに関わった人たちは、
「自分のせいかもしれない」と、
とても大きな罪悪感を抱えていました。
傷ついた本人だけでなく、残されて対応する人たちも、
それぞれに傷つき、戸惑い
疲れてしまったのです。
私自身も、
「みんなが振り回されているような気がする」
「もう、ここまでやってダメなら仕方がない」
「正直、面倒くさいなぁ」
と思いました。
大人になっても、それぞれの思いや正しさがぶつかると、
ほんの小さな出来事が、
いつの間にか小さな戦争のようになってしまうことがあります。
「大丈夫、大丈夫、すべてうまくいく」
そんな中で、私はずっと、ある言葉を唱えていました。
「大丈夫、大丈夫、すべてうまくいく」
すぐに何かが変わったわけではありません。
状況がどうなるかも、まだ分かりませんでした。
それでも、この言葉を繰り返すことで、
私は不安や怒りにのみ込まれず、
自分の心を少しずつ穏やかな場所へ戻すことができました。
誰が正しいのか。
誰が悪かったのか。
どうすれば相手を変えられるのか。
そこばかりを考えるのではなく、
「きっと大丈夫」
「必要なところへ落ち着いていく」
と信じてみようと思ったのです。
急きょ、我が家で個人練習をすることに
そして、ことが起こってから2~3日経ち、
我が家で、何人かで個人練習をすることになりました。
私は、「辞めたい」と言っていたその方にも声をかけました。
来てくださったものの、最初のうちは表情も硬く、
どこかぎこちない雰囲気がありました。
こちらから無理に気持ちを聞き出したり、
あの出来事について話し合ったりはしませんでした。
ただ、いつものように歌い始めました。
一曲、また一曲。
ピアノを弾き、みんなの声が重なっていくうちに、
少しずつ空気が変わっていきました。
硬かった表情がゆるみ、会話が増え、
最後のほうには、いつものその方に戻っていました。
そして、そのままコーラスに完全復帰することになったのです!
あんなにみんなが悩み、疲れ
、どうなるのかと心配していたことが、
音楽の中で、少しずつほどけていきました。
本当によかった~
心から、そう思いました。
本当は、、歌うことが好きだった
その方は、もともと歌うことが大好きな方です。
「辞めたい」という言葉の奥にも、本当は、
「みんなと歌いたい」
「自分の声を受け入れてほしい」
「安心してここにいたい」
という気持ちがあったのかもしれません。
人は深く傷ついたとき、自分を守るために、
「もう辞める」「もう行かない」
と言いたくなることがありますよね。
でもそれは、音楽が嫌いになったから出た言葉
とは限りません。
本当は好きだからこそ、
うまくいかないことが苦しくなったり、
仲間からの言葉に傷ついたりすることもあるのでしょう。
これは、大人も子どもも同じだと思います。
吹奏楽部や合唱、ピアノの練習でも、
「自分には向いていないのかもしれない」
「自分の音は、みんなの邪魔になっているのかもしれない」
と感じて、音楽から離れたくなることがあります。
でも、心の奥に「やっぱり音楽が好き」
という気持ちが残っているなら、
安心して戻れる場所があることで、
もう一度音を出せることもあります。
最後に私たちをつないだのは、やっぱり音楽でした
今回の出来事は、話し合いですべてを解決したわけではありません。
誰が正しかったのかという答えを出したわけでもありません。
ただ、同じ場所に集まり、ピアノの音を聴き、
一緒に声を重ねました。
すると、言葉だけでは埋められなかった心の距離を
、音楽がそっとつないでくれました。
コーラスは、一人ではできません。
それぞれ違う声を持つ人が、隣の人の声を聴き、
お互いの呼吸を感じながら、一つの響きをつくっていきます。
誰かの声を消すのではなく、
自分の声だけを響かせるのでもなく、
互いの声を聴き合う。
それは、人と人が一緒に生きることにも似ているような気がします。
音楽が、心の居場所であるために
けれど人は、いろいろな経験をします。
楽しいことだけでなく、悩んだり、傷ついたり、
どうしたらいいか分からなくなったりすることもあります。
でも、そうした経験があるからこそ、
「自分にとって本当に大切なものは何だろう」
と考えることができます。
今回の出来事を通して、私は改めて、
仲間と一緒に歌える時間を大切にしたいと思いました。
そして、子どもにも大人にも、
音楽が「できない自分を責める場所」ではなく、
安心して自分の音を出し、
また戻ってこられる心の居場所であってほしいと思います。
私がずっと唱えていた、
「大丈夫、大丈夫、すべてうまくいく」
という言葉。
コーラスのみんなで笑いながら歌っている姿を見て、
本当にそうなったと思いました。
いろいろな感情を味わったあと、
最後に私たちをもう一度つないでくれたのは、、
やっぱり音楽でした。
これからも私は、音楽の力を信じながら、
目の前の人が安心して自分の音を出せる場所を
つくっていきたいと思います。
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