仲間と歌えることは、当たり前じゃなかった

吹奏楽・合唱・アンサンブル

先日、私が伴奏をしているコーラスの中で
ちょっとした出来事がありました。

詳しいことは書きませんが、
ある団員さんが誰かの言葉に深く傷つき
「もうコーラスを辞めたい」
と言い出したのです。

本人が特に気にして、よくしようと頑張っていたところを指摘されたことで
「自分の声はコーラスに合っていないのかもしれない」
と思ってしまったようでした。

私は話を聞きながら、気持ちをなだめたり
「今すぐ決めず、少し時間を置いて考えてみたら?」
と伝えたりしました。

でも、私の心の中にも
いろいろな感情が湧いてきました。

このまま活動を続けられるのだろうか

私たちのコーラスは、決して人数の多い団ではありません。
一人が抜けるということは、単に人数が一人減るだけではなく
これまでのような活動が難しくなる可能性もあります。

今月末には、小学校や中学校へ歌いに行く予定もあります。
その方自身も、学校へ歌いに行くことを楽しみにしていました。

だからこそ私は、
「せっかくみんなで練習してきたのに」
「これからの活動はどうなるんだろう」
「本番は大丈夫だろうか」
と、一気に不安になりました。

そして、いろいろな人の思いや考えを聞いているうちに、
「みんなが振り回されているような気がする……」
「もう、ここまで話を聞いてもダメなら仕方ない」
「正直、面倒くさいなぁ」
そんな気持ちにもなりました。

大人になっても、それぞれが自分の思いや正しさを主張し始めると
ほんの小さな出来事が大きな問題になってしまうことがあります。

まるで、小さな戦争のようでした。

できないところを指摘されると、心まで苦しくなる

音楽をしていると、できていないところを指摘されることがあります。

高い音が出ない。
音程が合わない。
リズムが違う。
一人だけ音が飛び出している。

よりよい演奏をつくるためには
直すべきところを伝えることも必要です。

けれど、本人がいちばん気にして、
一生懸命に頑張っているところを指摘されたとき、
その言葉が思っている以上に深く心へ刺さることがあります。

これは、大人も子どもも同じなのだと思います。

吹奏楽部や合唱、ピアノの練習でも
できないことばかりに目を向けられると、
「自分には向いていないのかもしれない」
「自分の音は、みんなの邪魔になっているのかもしれない」
「もう辞めたほうがいいのかな」
と、音楽を続けることそのものが
苦しくなってしまうことがあります。

本当は音楽が嫌いになったわけではない。
仲間と一緒に演奏したい気持ちもある。

ただ、傷ついた心を守るために
「辞めたい」という言葉が出てくることもあるのかもしれません。

仲間と歌えることは、決して当たり前ではない

今回の出来事から二日ほどたち
団員のみなさんにも状況を伝えました。

きっと、みなさんそれぞれに
いろいろな思いや考えがあると思います。

誰が正しいのか。
誰の言い方が悪かったのか。
どちらの気持ちを分かってあげるべきなのか。

考え始めれば、いくつもの答えが出てきます。

でも、少し時間がたって気持ちが落ち着いたとき
私の中にふっと浮かんできたことがありました。

それは、
仲間と一緒に歌えることは、決して当たり前ではない
ということです。

普通に毎日を暮らせること。
健康で練習に出かけられること。
好きなことを楽しむ時間があること。
一緒に声を重ねてくれる仲間がいること。

そして、私たちの歌を楽しみに待ってくださる方がいること。

その一つひとつが、本当はとてもありがたいことだと思うのです。

感謝することと、我慢することは違う

もちろん、感謝しているからといって
傷ついた気持ちを我慢しなければならないわけではありません。

悲しかったことや苦しかったことは、なかったことにしなくていい。
言葉にして伝えることも、大切だと思います。

でも、その土台に、
「一緒に音楽をつくってくれる人がいる」
という感謝があったなら、
伝える言葉も、相手の言葉の受け取り方も
少し変わるのかもしれません。

コーラスは、一人ではできません。
自分の声だけを響かせるのではなく
隣の人の声を聴き、お互いの呼吸を感じながら
一つの音楽をつくっていきます。

それは、音楽だけでなく
人と関わることにも似ているような気がします。

自分の思いだけでいっぱいになったときこそ
少し立ち止まって、相手の声にも耳を傾けてみる。

違う声を持つ人同士が、互いを消すのではなく、
それぞれのよさを生かしながら一つの響きをつくる。

それが、コーラスの魅力なのだと思います。

音楽が、安心して戻ってこられる場所であるために

音楽は、うまい人だけのものではありません。
できないことがあっても、失敗しても、
「ここにいていい」と思える場所であってほしい。

特に、これから音楽を学んでいく子どもたちには
できていないところを直すだけではなく、
「昨日よりできるようになったね」
「その音、よかったよ」
「あなたの音も大切だよ」
という言葉を、たくさん届けたいと思います。

技術を身につけることと同じくらい、
安心して音を出せること、
仲間と一緒に演奏する喜びを感じることも、大切だからです。

けれど人は、いろいろな経験をします。
楽しいことだけでなく、悩んだり、傷ついたり
どうしたらいいか分からなくなったりすることもあります。

でも、そうした経験があるからこそ
「自分にとって本当に大切なものは何だろう」
と考えることができます。

今回の出来事を通して、私は改めて、
仲間と一緒に歌える時間を大切にしたいと思いました。

そして、子どもにも大人にも
音楽が「できない自分を責める場所」ではなく
安心して自分の音を出し
また戻ってこられる心の居場所であってほしい。

これからも私は、目の前の人の声と気持ちに耳を傾けながら
一緒に音楽を育てていきたいと思います。

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プロフィール
鳥取県で7人の子育てと酪農を両立しながら、合唱伴奏15年・吹奏楽指導・幼少期からの奄美の音楽経験を持つ講師が寄り添う伴走型ピアノレッスンを提供。初心者も安心、信頼と実績ある指導で“心が育つ音楽”を届けます。
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